
村山 繁雄
大阪大学大学院連合小児発達学研究科
子どものこころの分子統御機構研究センターブレインバンク・バイオリソース部門
東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク
今回、生命科学連携推進協議会の国内外連携ネットワーク活動の支援を受け、ソウルで開催された、国際パーキンソン病・運動障害学会に参加し、プレナリーで発表しました。
この学会は英国を基盤とし、パーキンソン病及び関連疾患と、不随意運動を専門にする小児、成人、老年神経学専門医、脳外科医、精神科医をはじめ関連諸科が集まり、国際的色彩が豊かな、特徴ある学会です。
今回極東の地で開かれたにもかかわらず、参加者4,400名、99ヵ国が参加、抄録2,620、科学セッション60以上と、昨年開かれたHawaii以上の賑わいだったと思います。
初日はパーキンソン病の治療、診断、不随意運動に関わる臨床情報が詰め込まれたプレナリーで、最新の診断、治療を得るのに役立ちました。ポスターセッションはePosterで、短い呈示と質問の繋がりで、慣れない私にとっては掲示ポスターの方が良い印象でした。
二日目は本学会の主題であるパーキンソン病と老化のテーマの始まりで、その最初のプレナリー口演が私でした。シンポジウム名は、老化におけるパーキンソン病の合併病変で、私に与えられたテーマは、パーキンソン病に合併病理が加わった時の結果でした。
国際会議場大会議室満員の観客の前での口演は、いつもフロアから好き勝手な質問を浴びせている私にとっても多大なプレッシャーであり、生まれて初めて朝ご飯をパン一個とコーヒーで済ますことになりました。前の晩はRecorded Power Pointで口演時間を確認し、英語に関してはChat GPTで校正後、修正を繰り返しました。読み原稿を用意したのですが、結局アドリブで話しました。
発表内容は高齢者ブレインバンクホームページに掲載しました。生命科学連携推進協議会の支援を受けていることをCOIで示し、続いてCoBiAの支援を受けている日本神経科学ブレインバンクネットワークの紹介をしました。
東京都高齢者ブレインバンクは在宅高齢者支援総合救急病院の開頭剖検例を文書同意の元に蒐集しており、以前は65歳以上の受診に限定されていてその記録が残っていること、診療圏に含まれる人口が100万人を越えることより、在宅高齢者コホートリソースとして国際的承認を受けています。
今回凍結脳リソースのある2,560例の検討で、中枢神経系に、孤発性パーキンソン病の診断必須病理であるレビー小体が認められるものが約3割であること、パーキンソン病は脳だけでなく全身を侵す疾患であることを示しました。皮膚にもレビー小体病理が出現することを最初に報告したのは我々ですが、米国で現在臨床診断に商用化されています。また本邦でパーキンソン病診断に使われているMIBG心筋シンチグラフィーの特異度を15年にわたる剖検例での検討でほぼ100%であることを示しました。
高齢者ブレインバンクではアルツハイマー病理を老人斑と神経原線維変化のBraakステージ分類に基づいて評価しています。高齢者コホートではアルツハイマー病理を満たすものが20%に及ぶことを示しました。
これらの前提の上で、パーキンソン病で認知症が無く亡くなった方の場合、アルツハイマー病理変化を示すものが一例もないことを示しました。この結果は齊藤祐子博士が同様にCoBiA支援を受け、2010年から2019年まで責任者を務めた国立精神・神経医療研究センターブレインバンクでも確認されていました。このことは、アルツハイマー病理を免れれば、パーキンソン病の方は認知症にはならないことを意味する結果と考えられます。
これは大きな反響を呼び、日本を含め、色々な国の方から感謝の言葉を述べられました。パーキンソン病を診ている専門家にとって、私の示したデータは福音になる可能性があります。また質問が多く寄せられ、一つ一つ答えました。その後も自撮りで一緒に写真に入ってくれと年配の女性研究者に言われ驚きました。またあの数は何だとベテラン男性研究者に言われ、伝統だと答えました。
その後は会長シンポジウムで、伝統ある有名医師の名付賞の口演が続きました。午後は分割された教育セッションで、私は前半がパーキンソン病の認知障害、後半はパーキンソン症候群の画像を選択しました。
三日目はAIが取り上げられ、北京ではAI Doctorが起動していることを知りました。また、私が1989-1991までクリニカルフェローとして留学し医師免許を取得した米国ではDictaphoneの文字起こしが標準装備でしたが、クリーブランドクリニックではAIにそれを担当させている情報を得ました。今後AIがどのように活用されていくかは目が離せないと思います。
続いて本学会の目玉の一つである、患者自身も参加しエキスパートが診察し診断する、総合クリニカルカンファランスが行われました。地理的位置から韓国人の患者が主でしたが、臨床経過と神経学的診察から鑑別を述べ、画像、検査結果で確認するという古典的手法に基づいており、過程が全て学習となります。
四日目は画期的主要成果として、抗老化細胞への免疫治療が取り上げられました。
本当に目からウロコの話でした。
夕方には本学会の最大の目玉であるビデオセッションが行われました。これは世界から集まった不随意運動のビデオ投稿より症例を選択し、発表者が診断をマスクしプレゼンを行い、エキスパートが鑑別を述べるかたちです。投稿元は全大陸にまたがり、今回見たことも聞いたこともなかった症例が多く取り上げられました。国際色豊かなプレゼンと文化を背景としており、本学会の醍醐味でした。
最終日は血液バイオマーカーの話と総括でした。その後はイエスとノーに分かれる討論セッションがあり、終了後は総括になりました。
この学会の特徴は、米国で開かれる学会が欧米人主体であるのに対し国際色豊か、かつ全大陸から専門家が集まる点が、重要と思います。
また最新の研究情報だけでなく、クリニカルスキルを磨くところが設けられている点も重要と思いました。
今回の派遣において、日本の国内外連携ネットワーク活動において、大きな貢献が出来たと確信しています。
今後も努力を続ける所存です。
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