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第69回NIBBコンファレンス"Deciphering Biological Phenotypes Regulated by Cell Vigor"開催報告

三浦 正幸(基礎生物学研究所)

基礎生物学研究所コンファレンス(NIBB Conference)は、研究所の教授等がオーガナイザーとなり、海外からの招待講演者を交えて開催される国際会議です。研究所創立の1977年に開催された第1回以来、基礎生物学分野の国際交流の場として親しまれており、これまで68回の会議が岡崎にて開催されました。2025年度は「細胞の活力制御」をテーマとし、The 69th NIBB Conference "Deciphering Biological Phenotypes Regulated by Cell Vigor"を開催しました。


細胞の活動は、物質を分解する異化と合成する同化からなる代謝によって支えられており、これは「壊すこと」と「創ること」が互いに生命維持に関わっている端的な例です。本コンファレンスでは、細胞の活力が低下する生命現象に注目し、分子から個体レベルまで、それぞれの階層で取り組まれている研究から生物の活力の制御機構とその生理的な役割を考察することを目的に企画しました。

キーノートレクチャーでは、Yuan博士が「How do cells die?」という問いに対する多岐にわたる研究を紹介し、ミクログリアにおける制御されたネクローシス機構が神経変性の進行に関わる可能性を示しました。長田博士は、アポトーシス時に細胞膜リン脂質の非対称性が乱れる現象を制御する中心分子であるフリッパーゼとスクランブラーゼファミリーの包括的かつ詳細な解析から、生体膜のリン脂質非対称性制御が多彩な生理機能を持つことを明らかにしました。

続く講演では、以下のような細胞死およびストレス応答に関するテーマが紹介されました。

  • アポトーシスに関わるカスパーゼの細胞内時空間制御
  • カスパーゼの非アポトーシス機能としてのストレス応答制御
  • パイロトーシスを実行するGSDMDの分解制御
  • 超硫黄分子による新たなストレス応答機構
  • eEF2に特有なジフタミド修飾の生理機能

次に、細胞社会の文脈における細胞活力低下や幹細胞維持の制御に焦点が当てられました。

  • 細胞競合に共通するメカニズム
  • 老化細胞と周囲の細胞との相互作用
  • 遺伝子発現の揺らぎによって細胞集団中に抗菌剤耐性細胞が出現する現象
  • 精子幹細胞の器官レベルでの制御機構

細胞活力制御の個体レベルでの生命現象に関してはユニークな生物を用いた研究が紹介されました。

  • ハダカデバネズミを用いた老化研究
  • シリアンハムスターの冬眠研究
  • アリを用いた社会性による個体老化制御の研究

上記の異なる階層の研究において、生体イメージング技術が積極的かつ有効に用いられました。中でも、技術開発によって未知の細胞状態を明らかにした宮脇博士の研究、細胞が生きている状態の理解に焦点を当てた岡田博士の研究は、細胞活力の捉え方に大きな示唆を与えるものでした。

ポスターセッションにおいても、生物種や解析の階層を超えた多岐にわたる37演題の発表がなされ、活発な議論が展開されました。「細胞の活力制御」という素朴な問いに関するコンファレンスでしたが、共通の興味のもとで深い議論が行われ、特に若手研究者の議論への積極的な参加が印象的でした。

最後になりましたが、多大なご支援をいただきました生命科学連携推進協議会、並びに、先端バイオイメージング支援プラットフォームに厚く御礼申し上げます。本会議を非常に有意義なものにしてくださった発表者と参加者の皆様(106名:中国、米国、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、日本)、並びに会の運営を支援していただいた研究力強化戦略室国際連携グループ、細胞活力制御研究室、基生研技術課の皆様に心よりお礼を申し上げます。

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